今回は、2023年7月28日に日本公開が決定したスリラー映画「イノセンツ(原題:The Innocents)」を紹介します。本作は「TITANE/チタン」や「LAMB/ラム」と同じく2021年の第74回カンヌ国際映画祭で上映され、ある視点部門に出品されました。実は僕は2022年に鑑賞してその年のマイベスト映画だったのですが、日本公開が決まるまでこの記事を温めていました。ようやく日本公開が決まって嬉しいです!
■作品概要
作品:The Innocents/De uskyldige
製作:2021/ノルウェー
上映時間:117分
■あらすじ
とある集合住宅に引っ越してきた少女イダは、一人で遊んでいる男の子ベンと友達に。話を聞くと、なんとベンは超能力を練習中らしく実際にイダの前で石を飛ばして見せる。そんなこんなで仲良くなった2人だが、ベンは時折残酷な一面を覗かせ、イダをドン引きさせることもあった。その後、同じく近所に住むアイシャ、イダの自閉症の姉アナと4人で遊ぶようになるが、ベンのドス黒い感情は次第にエスカレートし、超能力を使って人に危害を加え始める。そしてそれを止めるために同じく能力を覚醒させた3人がベンに立ち向かい、壮絶な殺し合いバトルが幕を開けるのであった……。
■予告編
■ネタバレなし感想
最高に面白く、2022年ナンバー1の映画でした。久しぶりに先の展開を想像して恐ろしくなるような、お願いだからバッドエンドに向かわないでくれーと祈る気持ちで見るような映画でした。やっぱり北欧ホラーは凄まじいですね。
監督のエスキル・フォクトはヨアキム・トリアーの作品で脚本を手がけていて、「テルマ」やアカデミー賞にノミネートされた「わたしは最悪。」など注目作に関わっている方です。もうこの時点で今回も一筋縄ではいかないことは明確なわけです。
さて、本作で最初から最後まで貫かれているのは、子供だからこその純粋さ、興味本位・遊び半分の恐ろしさです。それが「The Innocents」というタイトルを表しています。
ベンは家では母親から虐待され外では上級生からいじめられているのですが、目覚めた超能力にこれまで蓄積されたフラストレーションが影響するかのようにどんどん力を覚醒させていきます。後半にはなんと、他人を操るというとんでもない能力まで手に入れてしまいます。
そのベンに立ち向かうのが主人公イダ、イダの自閉症の姉アナ、心優しいアイシャの3人です。ベンが能力で人を傷つけている姿を見て、次第に対立構造になっていきます。
子供たちによる静かなサイキックバトルがどのような結末を迎えるのか。間違いなく劇場で見る価値があると思いますので、公開を楽しみに待ちましょう!
ちなみに本作は猫と子供が残酷に殺されるシーンがありますので苦手な方は注意です。
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・監督のエスキル・フォクトが脚本を手がけた作品
■ネタバレあり感想
↓ここからネタバレありなので注意です!!!
ベンは猫を団地の階段の上から落として笑っているようなとんでもない子なので、当然のことながらイダは距離を置き始めます。
その後、能力が強くなったベンは自分を虐待する母親、自分をいじめていた少年を殺してしまいます。とうとう一線を超えてしまったわけです。一線を越えたことでますますエスカレートしていくベンは、念力で他の少年の骨を折って楽しんだりするので、イダたちはこのままではいけないと感じます。
そして心優しく正義感のあるアイシャは、ベンに立ち向かいます。しかし恐ろしいことに、自分に楯突いたと感じたベンはアイシャの母親を操り、アイシャのことを殺してしまいます。自分の母親に包丁で背中を刺されて命を落とすアイシャの姿は本当に辛くて見てられませんでした。子役の演技力も素晴らしかったです。
世間的にはアイシャは心を病んだ母親に殺されてしまった、という話になるのですが、イダはベンの仕業と確信します。このままでは自分もいつ狙われるか分からないと感じたイダはアナと力を合わせてベンに勝ち、物語は幕を閉じます。
サイキックバトルといっても派手なシーンは一切なく、人知れず公園で静かに繰り広げられる戦いがかえって恐ろしく魅力的な映画でした。
■関連作品
・ぜひミーガンにベンを懲らしめてもらいたい
・能力が悲劇を生む北欧版マイティ・ソー