今回は、A24が手掛けるスラッシャー映画「ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ(原題:Bodies Bodies Bodies)」を紹介します。批評家から絶賛されているらしい、ということを聞いて楽しみにしていました。世の中にティーンスラッシャー映画はたくさんありますが、A24なら一筋縄ではいかないような作品なんだろうなーとワクワクです。A24なのでてっきり劇場公開されると思いきや、ひっそりと配信が始まっていました。
■作品概要
作品:Bodies Bodies Bodies
製作:2022/アメリカ
上映時間:94分
■あらすじ
ハリケーンの夜、ラブラブなカップルのビーとソフィーは、ソフィーの旧友たちが集まるという"ハリケーン・パーティー"に向かう。ソフィーの到着を知った旧友たちは「え、あんた来たの?」と明らかに変な空気になるが、ソフィーは全く気にしていない様子。そんな中、恒例の"Bodies Bodies Bodiesゲーム"を行うことに。仲間の1人が殺人鬼に扮し、暗闇の中で殺人鬼にタッチされたらその人は死んだふりをする、そしてみんなで犯人を予想して投票する、そんな感じのゲームらしい。しかし、ゲームが終わった後、仲間の1人が本当に死んでいる姿で発見される。全員が大パニックになるが、これは最悪な夜の始まりにすぎなかった……。
■予告編
■ネタバレなし感想
話題になっていた本作をやっと見ることができました!批評家に絶賛されているというのは非常に納得で、伝えたいメッセージも分かりやすかったように思います。
物語は地味な労働階級のビーが、彼女であるソフィーの旧友たちが集まるパーティーに同行するところから始まります。ソフィーの友人はみんな裕福で、開催場所も大豪邸。早速ビーは居心地の悪さを感じるんですが、ソフィーもみんなに好かれているわけではなく、家に着いたらちょっと変な空気になります。
そして仲間の1人が死んでいるのを発見されてから、物語は大きく動き出します。次々と仲間が死んでいき、犯人は誰なのか、誰が生き残るのか、そんな展開になっていきます。こんな風にあらすじを書くと一般的なスラッシャーに感じるのですが、実は全然違います(笑)。
というのも、本作は"ブラックコメディーホラー"とカテゴライズされているんです。これがこの作品の肝であり、他のティーン向けスラッシャー映画とは全く違う要素になります。おそらく映画を見始めたらすぐに「あぁ、そういうことね」と結末が予想できる方は多いんじゃないでしょうか。
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■ネタバレあり感想
↓ここからネタバレありなので注意です!!!
本作、殺人鬼なんて登場しません。表面上は仲が良くても本当はお互いを信用していない友人グループが、1人の死をきっかけに疑心暗鬼に陥り自滅していく物語です。
登場人物はビー、ソフィー、デヴィッド、ジョーダン、アリス、グレッグ、エマの7人。最初にデヴィッドが首を切られて死んでいるのが見つかり、彼女たちはデヴィッド以外の唯一の男性であるグレッグを疑います。グレッグはアリスがマッチングアプリで出会った男なんですが、彼女たちはグレッグのことをよく知らないこと、アフガニスタンに行っていた元兵士であることから、彼が犯人と決めつけます。
当然いきなり犯人扱いされたグレッグは抵抗するんですが、犯人と思い込んだビーがダンベルで殴り、殺してしまいます。僕はこの辺で「この映画無理かも……」と思ってしまいました。これは「Pretty Little Liars」という海外ドラマから脱落した理由と同じなんですけど、たいした根拠もなく怪しいと決めつけて誰かを犯人扱いする人たちが見ていられないんですよね。
でも、本作の面白さはそこにあります。だって、グレッグは実際は元兵士でも何でもなく、獣医のアシスタントだったんです。不確かな情報や見た目からの偏見、勝手な思い込みによって人を疑い、殺してしまったんです。また、ビーも労働階級であることや羞恥心から学歴を偽っていたことを知られ、それだけで犯人扱いされてしまいます。
そうしてお互いを傷つけ合い、ビーとソフィーだけが生き残ります。最後、2人はデヴィッドのスマホの動画を見て真実を知ります。なんと、デヴィッドは大きな刀を使ってふざけてTikTokを撮っているときに、誤って自分の首を切ってしまったんです。もうこれは声出して笑っちゃいましたね。そう、これは事故だった訳です。
疑心暗鬼になったグループが崩壊していく映画はよくありますが、偏見や噂、思い込みで人を攻撃することの恐ろしさを改めて実感できる意味でも面白かったですし、同時に怖い作品でした。
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